2018年 05月 05日

<Episode #390> 静寂な湖 / Lake Shumarinai

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車のドアから一歩外に出ると、雨上がりのひんやりとした空気感と共に僕は何とも言えない静寂さに包まれた。
きっと湖全体がすっぽりと隈なく朝靄に包まれているからなのだろう。
さながら音の輪郭が一層際立つレコーディングルームの中にでも迷い込んだ気分だった。
まるで隣でささやいているかのようにウグイスや名も知れぬ野鳥の囀りが僕へと降り注いでくる。
それは僕が知っている朱鞠内湖らしい美しい朝だった。

僕は一瞬、タルコフスキー監督の映画「ノスタルジア」の中の朝靄のシーンを思い出す。

雪解けの流れを音色を耳にしながら、厚く固まった雪の上を歩いてイタリア半島の先端を目指すとする。
雪の上を歩きながらも、僕は相変わらず風の存在感を全く感じない。
長い白樺林を抜けると、きっとこんな日の朝の湖面はメタリックなシルバーグレイにピカピカになるまで磨き上げられているに違いない。





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釣りには不向きな朝だった。
でもこの静寂さとロケーションの中にポツリと佇みたくって深夜に200kmも車を走らせてきたのだから不満は何一つない。
何度も大きく息を吸い込み、ゆっくりと息を吐いた。
きっと湖を包んでいる朝靄が消え去り青空が顔を出したら、ゆっくりと湖面がさざ波立つに違いないから。

湖のコンディションからいうと、湖面にはいくつもの氷の塊が浮かび、湖水も透明度は50cm程度で朱鞠内湖らしいモスグリーン色に染まっていた。
取水崎の濁りはイタリアよりもさらにきつく、雪解けの沢水か注ぐインレットの方が濁りは薄らいでいたと思う。

ランニングラインをリトリーブする左手が強い衝撃でグゥンと止まる。
僕はその次に続く大きなヘッドシェイクを期待するのだけれども、ロッドはグリップの根元から美しいベンディングカーブを描いたまま。
偏光グラス越しにその存在と位置をチェックはしているものの、水面下の切り株にフライを何度も引っ掛けてしまい、フライボックスから一つまた一つとオリーブ色のゾンカーが姿を消していく。

収獲も一つあった。
マイザーの14’、#7/8番MKSにアトランティック・サーモン・ショート、8/9、S1/S2、520grがとてもマッチしていたこと。
本当は9/10があればそちらを使いたいんだけれど、ラインナップにはないのでちょっと残念。
それでもヘッドが少し短くなったおかげで、少しは長く丁寧にリトリーブすることが出来るかなと期待している次第。

リトリーブ中に僕が感じた根掛りとは異なる違和感は2度。
以前にも切り株の間にフライを通していて予想外の素敵な出合いもあったから、思わずそんな記憶がフッと僕の脳裏に蘇る一日だった。
あの静寂さを忘れないうちに、また足を運べればと思っている。





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Today's BGM :



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by slowfishing-yun | 2018-05-05 22:43 | Fishing Reports | Comments(4)
Commented by sugi-51 at 2018-05-06 00:50
yunさん、こんばんは。
心待ちにしていた朱鞠内湖、ご一緒出来ずに残念です。
釣りはタフコンディションでしたが、打ち寄せる波の音もなく、静寂さを一層際立たせ、心の何処かで求めている朱鞠内湖を楽しまれたのでは?。静寂さを切り裂くラインの音が聞こえる様です。
水位の上昇が例年よりも早いそうです。
昨年のイタリアは一週間で様変わりしてました。週末はどうでしょうかね。
Commented by タッド at 2018-05-06 08:26 x
詩的な写真ですね:)
私は2枚目のほうが好きです
1枚目の...湖面に写った方に緑色がかっているのがおもしろいです
Commented by slowfishing-yun at 2018-05-06 16:21
sugiさん、こんにちは。
その後、風邪の方はいかがでしょうか?
今回は残念ながらご一緒することは出来ませんでしたが、次はご一緒出来るといいですね。
濁りは少々気になりましたが、朱鞠内湖らしい雰囲気は楽しむことが出来ましたよ。
多分この濁りだと次の週末は沢水の入っているイタリアかナマコでしょうかね。
水温も低く、ワカサギの岸寄りも、もう少し先のように思えました。
でもsugiさん、今週末は釣りに行けるんでしたか?
Commented by slowfishing-yun at 2018-05-06 16:27
タッドさん、こんにちは。
風の穏やかでさらに曇り空と朝靄という何とも朱鞠内湖らしいロケーションでした。
最近はiPhoneで写真を撮り、インスタで2度ほど加工しています。
最終的な微調整はPCのPhotoshopで行いますが、最近は本当に簡単で便利になりました。
でも、写真の構図によって印象がガラッと変わるのでなかなか面白いです。


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