きっと夜のうちは気温がグッと冷え込んでいたのだろう。
フィールドのいたるところに白く際立ったうぶ毛というか棘のようにも見える細かな霜が降りていた。
道南に訪れた春を僕に感じさせてくれる緑黄色のフキノトウも、もちろんそれは例外ではない。
ただその寒さの角だけは、少しは丸みを帯び始めていただろうか。
なぜなら、まだ早朝のうちは風がその存在を忘れるぐらい、ひと際穏やかだったものだから。
道南の本流に架かるいくつかの橋の前後で、まだまだ冷たい流れの中に静かにウェーディングした。
膝下ぐらいの水深の岸際をサ、サ、サっと、とてもすばしっこく泳ぐ小さな鮭稚魚の姿を見た。
でも、もしかしたらその数は思ったよりも少なかったかもしれない。
なんとも早春らしく、今日はとにかく日差しが強いから、もしかしたらストラクチャー周りに隠れているのかもしれないけれど。
期待感をお釣りがくるぐらいたっぷりと持って臨んだ最初の2ヶ所のポイントでは、まったく何のコンタクトも訪れなかった。
そして3ヶ所目の少し水深があるポイントで、やっと僕の流すフライにプルプルと小振りなアメマスからのコンタクトが訪れる。
それにしても、身体の割にはずいぶんとあどけない表情のアメマスだった。
雪代の入った冷たい流れにそっとリリースする。あっという間に姿が見えなくなった。
楽しみにしていた無駄の欠片も無い筋肉質なアメマスとのスリリングな出合いは、そういう訳で来年へと持ち越しに。
午後からは風がずいぶんと強まったかな。
下流からの強い風に煽られて小波立つ川面が、早春の太陽の日差しを浴びてギラギラと眩しく輝いていた。
頭上のすぐ近くの空でホバリングしながら囀るヒバリの鳴き声が、何だかとても春らしくって心地が良かったように思う。
S1/S2のアトランティック・サーモンSHを巻き込んだKineyaのリールの逆回転音も、そんなヒバリ達の鳴き声のように、
僕にはちょっと控えめだけれど、とても心地が良い音色のように響いてきたのだった。
3.27→3.29
Today's BGM :