人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2015年 01月 01日

<Episode #85> ユトリ

<Episode #85> ユトリ_f0317993_20443820.jpg



静けさの中で鳥達の囀りが響いている。ここは薄っすらと青白い靄のかかった早朝のキャンプ場。僕の吐く息は白い塊になったまま。
色彩のトーンはまだ鮮明ではないから、日の出までにはもう少し時間があるのだろう。
まだ薄らぼんやりとした意識の中で、決まりきった流れ作業のようにヒーターに冷たいガスボンベをセットする。
1リットルのペットボトルから必要な分だけ白いホーローのポットに水を注いだ。
そしてヒーターに火をつけると、ボーっという音と共に青白い炎が浮かび上がる。

透明のジプロックからイタリアンローストと書かれたオレンジ色のパッケージを取り出しサッと封を切ると、
まず一度目の良い香りがフワッと僕の鼻へと届けられ、今までよりも一段階意識が覚醒した。

フツフツとポットの中が動き出すと、やがてそれはカタカタとポットの蓋の騒がしさへとシフトする。
慌てた僕がヒーターのノブを絞る前に、湯気と共に注ぎ口から溢れ出たお湯が勝手にヒーターの火を消してくれた。

ユニクロ社のフリース地のジャケットの袖をグローブ代わりにしてポットの取っ手を持ち、
ステンレス製のカップにセットしておいたドリップ式のコーヒーに少しだけお湯を注ぎ、まず深くローストされたコーヒー豆をゆっくりと蒸らす。
やがてローストされたコーヒー本来の素敵な香りが僕の鼻孔へと届けられ、僕の意識はさらに一段階覚醒した。

キャンピングチェアに座りながらコンビニで昨夜に買ったちょっと甘めのパンを口に頬張り、淹れたばかりの熱いコーヒーをひと口すするそんなひと時。
車のカーゴルームに車中泊セット一式を放り込み、キャンプ場で迎えた早朝の青白い光の中で行われるそんな一連の流れ作業。
タバコに火をつけながら昨日の釣りを振り返り、まずはあそこのポイント、そして次はあのポイントと今日の釣りを組み立てるそんな余裕のある時間。

僕にとってのこれらの至福のひと時、いつもそばには淹れたてのブラックコーヒーが手放せなかっただろうか。
もちろんランチの後に飲むコーヒーも好きだけれど、やっぱりこの早朝の目覚めの時間に飲む淹れたてのコーヒーが一番好きかな。

そんな早朝に飲むドリップ式のコーヒー、僕のお勧めは深くローストされたKALDIのイタリアンローストだけれど、
本当のお勧めは自宅から持ち出した豆源の神戸ブレンドかな。濃いめのエスプレッソ好きなら細かく挽いた湘南ブレンド。
ただどちらの場合も空のドリップフィルターを用意するのがちょっと面倒だけれどもね。

今年もそんなユトリというかのんびりとした釣りが楽しめればいいなと、戦後がいつの間にか戦前にならないことを祈りつつ思う今日この頃。

元旦の夜に巻いた今年最初のフライは、ホットオレンジとブラックのマラブーを使ったコーンヘッド仕様のチューブフライ。
昨年の秋、E.S.L.と同じくらいSalty Heaven Riverの本流レインボーに好評だったこのフライの名前は"Fascination"。


<Episode #85> ユトリ_f0317993_14205049.jpg



Today's BGM :



# by slowfishing-yun | 2015-01-01 22:10 | Slow Fishing | Comments(6)
2014年 12月 30日

<Episode #84> From Fishmadman in Denmark

<Episode #84>  From Fishmadman in Denmark_f0317993_17354083.jpg



blogというか何かしらのwebsiteを長く続けていると、新たな友人との出会いだけでなく、
時には遠く離れた海外から素敵なサプライズがあったりと・・・。
ずいぶんと前にはHPで写真を使いたいからと、マイザーさんからどれでも好きなロッドを代わりにプレゼントするよ、
と言われたこともあったけれど、
ある日メールで届いたメッセージは、以前ここでも紹介したことがあるデンマークの"FISHMADMAN"というwebsiteのJesperさんから。
メッセージの内容は、いくつかフライを送るから使ってみてという内容だった。


<Episode #84>  From Fishmadman in Denmark_f0317993_17522834.jpg



クリスマスが過ぎた数日後、クリスマスカードが入った国際郵便が自宅のポストにデンマークから届く。
まるで小さな虫かごのような紙製の箱をワクワクしながら開けてみると、
そこにはMonster Tube CaddisやTube Bomber、FlashBack Bug、それにSka-Opperなどがぎっしり。
とても丁寧に巻かれたフライ達、来シーズンはヒゲナガがワサワサと水面を乱舞するダム下の流れで結んでみようかなと思う。
こんなフライに大きなレインボーがガバっと出てくれたら、きっとその後は甲高いスクリーミングサウンドを伴うスリリングなやり取りに違いない。

そしてもうひとつの大きなプラスチック製のチューブに入ったフライは、マウスやラットのチューブフライ。
ケースから出す前は、何だかちょっとホルマリン漬けの標本みたい。
来年の干支がねずみ年だったらタイムリーだったかも(笑)。
でもケースから取り出してみると意外と大きいサイズな上に、小さな耳や目までもがあしらわれていて、ちょっとしたアンバランスさが何ともユーモラス。
これはきっと1本巻くのにもかなり大変な作業だったと思う。
でも口の大きなアトランティックサーモンならまだしも、この大きさのフライに本流レインボーはちょっとね・・・笑。
そうなるとやっぱり北の本流のイトウ(Taimen)になるかもしれないけれど、さしずめ僕には手持ちのロッドのスペックが・・・、困ったなぁ(笑)。
それともいっそのこと、ロシアはカムチャッカ半島のワイルドレインボー?(笑)。

さて、サプライズへのお礼というかお返しには海釣り用の蛍光チューブマテリアルとインタラクションでも贈ってみようかなと。
気に入ってもらえると嬉しいのだけれども。

P.S. ECHO社の以前から気になっていたFIBERGLASS SPEY、いよいよリリースされる様子。


<Episode #84>  From Fishmadman in Denmark_f0317993_1824394.jpg



Toady's BGM :





# by slowfishing-yun | 2014-12-30 18:46 | Slow Fishing | Comments(4)
2014年 12月 27日

<Episode #83> メジャーと忘れ物

<Episode #83> メジャーと忘れ物_f0317993_14453619.jpg



ロッドにリール、フライにウェーダー、それにウェーディングシューズのどれかひとつでも自宅に置き忘れてきたことを、
フィールドに着いて準備している時にハッと気付くと、さて今日という一日をどうやって過ごそうかと本当に困り果ててしまう。
僕の場合、リールをすっかり自宅に置き忘れてきたことが確か過去に一度あっただろうか(笑)。

釣りそのものには何ら支障はないけれど、ランディングネット、カメラ、メジャー(スケール)を車のカーゴルームに置き忘れることは、
僕の場合よくあることで、何か足らないなぁと思いながらしばらく歩きつつ背中やポケットを手で探り、ハッと気付くことがほとんど。
でもなぜかそんな時に限って、大きなトラウトに出合えたりするものだからなんだか本当に不思議な話。

先日僕にとっては3代目となるSMITH社のメジャーがとうとう壊れてしまった。
スケールを巻き取る内部のスプリングが錆びてしまい、引き出したスケールをまったく巻き取れなくなったのだ。
今回もこれまでとまったく同じ症状。そんな訳でとうとう新しいメジャーを探すことに。

今回はPazdesign社の小さなメジャー(スケール)を量販店で購入する。
そらそろカタログから姿を消すそうだから、錆びさせないように時々メンテナンスしながら丁寧に使わないとね(笑)。

この時は特に忘れ物はしなかったけれど、写真は秋のSalty Heaven Riverで出合ったLLサイズの本流レインボー。
おそるおそるスケールをあててみると確か61cmのふくよかなボディのレディーだったかな。

カリカリとラチェット音を立てながら購入したばかりの新しいPazのメジャーからスケールを引き出してみた。
目に前にあのレインボーはもういないけれど、スケールが示す61cmという数字は僕が思ったよりも大きかった。
今度はメジャーの真ん中にある小さな白いボタンを押すと、シュルシュルっと気持ちよくスケールが巻き取られていく。
すると僕のイメージの中であのレインボーの幻影が本流の流れの中でゆっくりと泳ぎだしていったように僕には感じられた。

来シーズンもあんな本流レインボーに出合えるように、引き続き何らかの形で放流活動には協力できればと思っている。


<Episode #83> メジャーと忘れ物_f0317993_17574328.jpg




# by slowfishing-yun | 2014-12-27 15:43 | Slow Fishing | Comments(8)
2014年 12月 21日

<Episode #82> "Interaction"

<Episode #82> \"Interaction\"_f0317993_16483950.jpg



The name of this fly pattern is the "Interaction(インタラクション)".

ブラス製のコーンヘッド、
プラスチックチューブ(1.5mm&0.8mm)、
ラビットストリップ、
UVポーラーシェニール、
スードゥーヘアのダビングツイスト、もしくはマラブーやスペイハックル、
などの組み合わせ。


<Episode #82> \"Interaction\"_f0317993_16553819.jpg



安定した泳ぎやマテリアルの柔らかな動きといい、
ここ最近僕が巻くフライの中で一番信頼しているフライパターンだろうか。
このフライのキーポイントは、カラーにゴールデンフェザントティペットをハックリングしていること。
ショルダーというか傘でいうところの骨組みの役割を担っていて、その後に続くスードゥーヘアやマラブー、
スペイハックルなどの柔らかいマテリアルをフンワリと仕上げてくれる。それに黒の模様もちょっとしたアクセントにも・・・。
おそらくチューブに固定されたラビットストリップは、飛行機でいうなら安定性を保つ垂直尾翼のような役割といったところか。
スードゥーヘアのダビングツイストに少々手間はかかるけれど、マラブーやスペイハックルで代用すれば、
もう少しタイイングの時間を短縮できるかもしれない。
インタラクションというコーンヘッド仕様のチューブフライは、とにかく一番のお気に入りパターン。
これまでたくさん巻いてきたイントルーダーよりも僕はトラブルの少なさという点で、ついついフィールドではインタラクションの方を結んでしまう。


<Episode #82> \"Interaction\"_f0317993_17152033.jpg



取り敢えず来シーズンの本流レインボーをイメージしつつ、ウィーリーガン風に数本のインタラクションを巻いてみる。
そのうちにジョックスコット風にも巻いてみようかな。
マテリアルのカラーを変えれば、バリエーションはさまざま。
初冬の十勝川ではチャートリュースをメインに使ったインタラクションが結構活躍してくれたし、
早春の別寒辺牛では、鮭稚魚をイメージしてオリーブと白を組み合わせたインタラクションを結んでみようと思う。
そんな訳でインタラクションも"slow fishing fly collection"の仲間入り(笑)。

"Interaction(インタラクション)"のタイイングはこちらから


<Episode #82> \"Interaction\"_f0317993_1728588.jpg



Today's BGM :



# by slowfishing-yun | 2014-12-21 17:33 | 私的FlyTyingの愉しみ | Comments(6)
2014年 12月 14日

<Episode #81> 氷のさえずり

<Episode #81> 氷のさえずり_f0317993_1611346.jpg



冷たい十勝川の流れにウェーディングしていると、すぐ横の岸際からどこか聞き覚えのある音色が響いてきた。
チリ、チリ、キンキン、チリ、キンと、指先のシビレすらもふと忘れさせてくれるような軽やかでリズミカルな音色である。
何気なく意識をそちらの方へと向けると、その音は岸際から張り出した氷と打ち寄せられた氷とが打ち合って奏でる音色だった。
それは木炭で火をおこした時、ようやく火が落ち着き始めて木炭の周りが白くなり始めた時に響いてくる音色や木琴の音にそっくりだった。
フィールに訪れた冬は、そんな不思議な音色を奏でながら、ゆっくりとそこに根付こうとしてたのかもしれない。
岸際の氷が週を追うごとに成長していく氷点下のフィールドで、ふと僕はそんな事を思った。


<Episode #81> 氷のさえずり_f0317993_16163118.jpg



冬型の気圧配置と十勝らしい冬の青空で、フィールドは見事に冷え切っていた。
ロッドのラインが通るガイドは、ひとつの例外もなくその全てが瞬く間に硬く凍りついた。
先端付近のガイドの氷を溶かそうと本流の中にロッドの先端を差し込むと、、今度はロッドの先端のブランクの周りまでもが凍りつく。
こうなると何だかお気に入りのMKSも、ロッドのアクションがモワン、モワンと歯切れの悪いものとなる。
リールを水に浸さないように細心の注意を払いながら、ロッドにまとわりついた氷を何度も取り払うのだけれど、その度に指先のシビレが増していった。


<Episode #81> 氷のさえずり_f0317993_16281752.jpg



フィールドの最低気温の推移から、上流から流れてくる氷のことを考えて少し遅めに札幌を発つことにした。
それでも、十勝川の支流のひとつである利別川から流れてくる氷の数が多過ぎて、その下流域ではほとんど釣りにはならなかった。
フィールドにウェーディングしていながらも、流れてくる氷の存在感が気にならなくなったのは、おそらく午後を過ぎてからだろうか。
小振りでプリッとしたアメマスにしか出会えなかったけれど、利別川の合流部よりも上流域では流れもあってなかなか面白かった。


<Episode #81> 氷のさえずり_f0317993_1640768.jpg



下流へと膨らむスカジットコンパクト(インター)に引かれてゆっくりとスイングするチャートリュース色のコーンヘッド・チューブ・ゾンカー
フライの名前はさしずめ、"Interaction : インタラクション"。
きっとチューブに固定されたラビットストリップの細かいファイバーとスードゥーヘアが流れの中で妖しく揺らいでいるのだろう。
そんなフライがズドンといきなり強い力でひったくられたのは、午後からさらに下流域へと移動してからのことだった。
バウン、バウンとアメマスのトルクフルな力強さというか幅広のヘッドシェイクと共に、マイザーMKSが大きくバウンドする。
ネットが凍り付いて役に立たないフォールディングネットは車の中だから、ハンドランディングまでにかなりヒヤヒヤしただろうか。
おまけにいつの間にかガイドが凍り付いてラインが通りづらかったから、尚のことリールにラインを巻き込みながら焦ってしまった。
背中がグリーンバックの海の色に染まっていたから、もしかしたら遡上タイプのアメマスだったかもしれない。
尾びれ付近が太くてたくましいアメマスの右顎から、チューブフライから離れたフックをフォーセップで外すと、
一瞬の間をおいて、あっという間に流れの中へと消えて見えなくなった。
このまま気温の低い日が続けば、十勝川で彼らに再会出来るのは、もしかしたら来年の春になるのかもしれない。
そんなことを氷のさえずりをかすかに耳にしながら僕は思うのだった。
                                                          1.72→1.81
P.S. Hardyから"Duchess"というクリック式の新しいリールが出るみたい。

<Episode #81> 氷のさえずり_f0317993_1732950.jpg



Today' BGM :





# by slowfishing-yun | 2014-12-14 17:10 | Fishing Reports | Comments(8)