2016年 11月 07日

<Episode #295> 白鳥の声を聞くと

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2日前に訪れた文化の日よりも北のフィールドには白の多さが際立っていた。
雪が少し深く積もった堤防の上を走り、まだ車のタイヤの踏み跡がない2つ目の降り口から記憶を頼りに雪道をさらに進む。
11月の風はとても穏やかで、小さな雪の塊が何の迷いもなく一直線に冬の空から降り続けていた。
急いでネオプレーン製のウェーダーに履き替えシューズの紐をきつく縛る。
タックルの準備を済ませて本流へと雪の上を歩き始めると、パウダースノーが敷き詰められた雪面には小さな足跡。
どうやら僕よりも先を行くポイントの先行者は、足跡の大きさからすると天塩川のキタキツネのようだった。


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雪の降るフィールド特有の静寂さの中で、僕もそれに同調するかのように静かにロッドを振った。
この日のロッドはMeiserの14フィート、7/8番のMKS。
このロッドは僕が初めて購入したMeiserのロッドで、カスタム仕上げのイメージは"Autumn"。
昨年の11月にもこのロッドで印象に残る素敵なレインボーにも出合えたから、もしかたらとちょっとした期待を込めてロッドにリールをセットした。
ある意味「験担ぎ」のようなものだけれど、それほど結果が伴っていないのも事実なのだが・・・。


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水温が2℃台の中、キャスト&スイングとステップダウンを繰り返し、ちょうどランの中間辺りにさしかかる頃だった。
ゆっくりと流れを横切るコーンヘッド仕様のチューブフライ"Interaction"のESLパターンがスイングの途中で不意にゴンと止まる。
大きな振幅のヘッドシェイクのあと、お相手は一瞬下流へと走ろうとするけれど、走るということを止めヘッドシェイクを繰り返す。
その時点で僕はお相手がレインボーではないことを直感するのだけれど、それにしてもパワフルかつトルクフル。
流れの強さも加わり、ランディングまでにちょっとヒヤヒヤしたけれど、最初のお相手は尾びれの大きさが印象的なアメマスだった。


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2日前に出合ったアメマスの群れがまだそのポイントには残っていてくれたようで、
ランの終わりまで僕がステップダウンを続けても、なかなかパワフルなアメマスとのコンタクトが途絶えることはなかったと思う。

そしてこの日も天塩川の雪が降り止むということはなかった。
午後になると降り方も強まり、風景は色調のトーンを下げた雪の白さで霞むようなものとなる。

この日の最後に天塩川での一番のお気に入りのポイントでロッドを振ることにした。
ここで初めてティップを15フィートのT-14から15フィートのT-11に替え、水面下の岩盤にフライが根掛かりしないようにする。
最初にフライを見つけてくれたのは、やはりアメマス。
一瞬下流へと疾走しようとするから、僕もそれに同調するかのようにドキリとしてしまった。
さらにキャスト&スイングとステップダウンを繰り返す。
スイングを終えて岩盤の脇でフライがそのままステイしていると、いきなりグゥンという強い力でロッドがのされてしまった。
手にしたロッドが数回バットからバウンドする。
お相手は一気に下流へと疾走しようとするけれど、そこで不自然にゴンと止まる。
ふとリールに目をやると、ランニングラインがS-ハンドルに絡まってるのが目に入った。
まさしく万事休すなのである。
慌ててランニングラインを外したけれど、すでにあの強烈なテンションはどこかへと消え去ってしまっていた。
フィールドにまた静寂さが何事もなかったかのように舞い戻る。

頭上を群れで飛ぶ白鳥の鳴き声がまるで掛け声のように一定のリズムで響いていた。
この鳴き声を聞くとフィールドにもいよいよ本格的な冬が訪れる。
本当はもう少しこの静けさを楽しんでいたいのだけれども・・・。
                                                        68.13→68.27

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# by slowfishing-yun | 2016-11-07 22:46 | Fishing Reports | Comments(10)
2016年 11月 06日

<Episode #294> 11月の天塩川

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車のカーゴルームにタックル一式だけでなく、祝日一日だけだというのにシュラフと毛布を積み込むことにした。
最近は深夜のうちにフィールドに着き、朝までアラームをセットして仮眠をとるようにしている。
そんな過ごし方をABUさんから教えてもらい、ここ最近は身体が随分と楽になったような気がする。
もしかしたら、しっかりと睡眠を取るという簡単なことで、少しはフィールドでの余裕のようなものが僕の中で生まれたかもしれない。
文化の日にアラームをセットした時間は朝の6時。日の出はおおよそ6時20分といったところ。


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まるで初冬のような雪化粧をした天塩川のフィールドで朝を迎える。
これほどの雪に覆われた天塩川で僕がロッドを振るのは初めてだろうか。
雪の白さと樹木の幹の茶褐色とのコントラストがなぜか早春の後志利別川での釣りを僕に思い出させた。
水位は若干高めだけれど濁度といいコンディションそのものはけっして悪くはないようだ。
ただ水温が4℃台とかなり低く推移しているから、本流レインボーの活性はそれほど高くはないのかもしれない。
風が穏やかなのがアングラーの気持ちを同じように穏やかにする。


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R.B.Meiser S2H12678MKS-4、マイザーの12フィート6インチ、7/8番、"Solar Eclipse"。
R.B.Meiser S2H14078MKS-4、マイザーの14フィート、7/8番、”Fire God"。
水位が若干高めなのでバックスペースがあまりとれないポイントもあり、ポイントによって2本のロッドを使い分けることにする。
ラインはインターのスカジットやスイッチヘッドにそちらも15フィートのT-14のティップとの組み合わせ。

最初のポイントはバックスペースのほとんどとれない深瀬のプールなので、ロッドは12フィート6インチのMKS。
ランの真ん中辺りでブラック&オレンジの"Snaelda"のバリエーションを結んだラインがスイングの途中でグゥンと止まる。
ここでレインボーならスクリーミングサウンドを伴奏にいっきに下流へと疾走するのだけれど、お相手は大きなヘッドシェイクを繰り返す。
僕の予想した通り、フライを気に入ってくれた最初のお相手は初冬らしいアメマスだった。


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午後に訪れたポイントはバックスペースが十分に取れるので、手にしたロッドは14フィートのMKS。
ランの瀬頭の脇ではサーモン達が背びれを出しながら産卵行動の真っ最中。
足先がジンジンとシビレるのを感じながらキャスト&スイングとステップダウンを繰り返し、
かなり釣り下ったランの中間あたりから僕はアメマス達の躍動感を感じ始める。
フライはコーンヘッド仕様のチューブフライ、"Interaction"のESLパターン。
こまであまり経験したことはないけれど、もしかしたらちょっとしたアメマスの群れと僕は遭遇したのかもしれない。
サーモンサイズのアメマスとはランディング寸前でアディオスしてしまったけれど、まるで昔の十勝川を彷彿させるひと時だった。
もちろん道東ほどのポテンシャルはないけれど、フィールドが天塩川ということと、それなりに流速もあるから結構楽しい。
僕としてはちょっと予想外の出合いだったけれど、一瞬レインボーのことをどこかに置いて、この初冬のひと時を楽しんだだろうか。
そしてまたフィールドには真綿のような白い雪が降り始めたのだった。
                                          68.17

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# by slowfishing-yun | 2016-11-06 22:02 | Fishing Reports | Comments(2)
2016年 10月 30日

<Episode #293> ロングドライブとフィールドコンディション

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北の大地がまるで冬の始まりを感じさせる寒波に包まれる。
きっと僕ひとりだったら一日でこんなロングドライブはしなかったかもしれない。
以前はABUさんとオホーツクの小さな山上湖から厚岸を流れる別寒辺牛川に日帰りロングドライブをしたこともあるけれど、
今回はmasaさん、ABUさんとの3人でのロングドライブ。
道東の十勝川からオホーツクの湧別川へといっきにフィールドシフトしてみることになった。


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十勝川へと足を運ぶのは夏の台風のあととしては初めてとなる。
フィールドはすっかり様変わりし、僕が知っている十勝川の面影はひとつも残されていなかったかもしれない。
白濁したいくつもの流れが複雑に交錯しあっている。
岸際には折り重なったたくさんの流木とさまざまな流下物。
お気に入りだったアミーゴポイントの入り口も、まるで別の知らないポイントにでも来たような気分にさせられる。
結局ウェーダーには履き替えず、ロッドは一度も振ることはなかった。


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3人で相談の末、それならばと足寄、陸別、訓子府と抜けていっきに湧別川へとフィールドシフトしてみることに。
車のフロントガラス越しに時々白い雪がちらつくのが見える。
窓越しの風景は鮮やかな紅葉から少しずつ初冬の色へと移り変わっていくのが感じられれた。

湧別川にも台風の影響が強く残されていただろうか。
こちらも流れの筋が変わるなどフィールドの様相がすっかり様変わりしている。
それに上流での工事の影響なのか、こちらも透明感の低い白濁した流れが流れ続けていた。
ちなみに膝下までウェーディングして、シューズのつま先がかろうじて見えるぐらい。

それでも岸際では遡上してきたサーモン達が白濁した流れの中で産卵行動の真っ最中。
3ヶ所ほどポイントを巡ってロッドを振ってみたけれど、今回は残念ながらトラウトの躍動感を僕は感じることが出来なかった。
日が山肌に隠れようとすると指先にはシャーベット状のものが作られ始める。
いよいよフィールドにも初冬の気配が漂い始めたかもしれない。
                                                         59.95、50.65

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# by slowfishing-yun | 2016-10-30 16:31 | Fishing Reports | Comments(8)
2016年 10月 23日

<Episode #292> 秋色の尻別川とサーモンのいたずら

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時折りドバァンと大きな水飛沫を上げて遡上してきたサーモン達が水面を派手に騒がせ、
その度に本流の静寂さが不意に乱されて僕は思わずドキリとしてしまう。
本流の水位はかなり低かったけれど、透明度のある深いグリーン色をした美しい流れだった。
まだしっかりとテンションがかからずナチュラル気味にドリフトするフライに、フッと違和感を感じる。
ランニングラインを通して明らかなヘッドシェイクを感じたけれど、そのあとフライは何事もなくスイングし始めた。
きっと遡上してきたサーモンのいたずらだったのだろう。
僕はそう思うことにした。


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少し寝坊して本流へと車を走らせる。
車のタイヤはすでに冬タイヤだけれど、2日前に降った峠の雪の存在感はほとんど薄らいでいた。
車の中ではLulu Rougeというユニットがミックスに関わったサウンドを流していた。
リバーブ処理の効いた透明感のあるサウンドが独特の雰囲気をかもし出していて、久しぶりに聴いても心地よかった。
そんな余韻にひたりながら、黄金色に実っていた稲穂はすでに刈り取られ、見晴らしがよくなったあぜ道をロッドを片手に歩む。
そしてゆっくりと秋色の染まる尻別川の流れをステップダウンした。


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2ヶ所目のポイントで根掛かりしてしまい、スカジットスイッチのラインとT-14のティップをロストしてしまった。
これまでにフィールドでラインをさまざまな原因でロストしたことは3度あるけれど、
尻別川でラインをロストしたのはウィンドカッター以来の2度目になるだろうか。
あの時はいい魚がフライを見つけてくれてマーキス・サーモンのけたたましいスクリーミングサウンドと共に一気に下流へと疾走したけれど、
バッキングラインとのつなぎ目がなぜか切れてしまい、そのままジエンドとなってしまった。
確かまだWinstonのDerek Brown Favoriteというロッドを愛用していた頃の話だけれど。

やがて小振りだった雨が本格的な雨の降り方へと変わる。
レインジャケットの袖口から冷たい雨が染み込み始めるのを感じた。
それにしても秋の釣りは本当にあっという間に一日が終わっていまう。
冷えた身体を引きずって僕は車へと戻るのだけれど、それでも気分は悪くはなかったかな。
                                                    36.80  9.25

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# by slowfishing-yun | 2016-10-23 11:53 | Fishing Reports | Comments(8)
2016年 10月 21日

<Episode #291> 秋休みと寒冷前線

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天塩川にウェーディングしながらゆっくりと孤を描くスガジットラインの先に続く水中をユラユラと漂うフライの位置をイメージする。
レインボーとの出合いに期待が持てるポイントだったが、何事もなくフライが僕の真下までたどり着く。
ふと視線を空に上げると、不思議な形をした雲が青空の中で浮かんでいた。
明日の木曜日から慣例前線の影響で天気が大きく崩れるんだそうだ。
そんな予兆が微塵も感じられない穏やかな秋晴れに包まれた水曜日。


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車の中では久しぶりにMassive Attackの初期のアルバムをフルボリュームで聴いていた。
ミニマルなビートの効いたサウンドも好きだけれど、抑揚の効いたストーリー性のあるサウンドも悪くはない。
でも、初期の作品はブリストル系のトリッキーな印象が強くて、ブレークビーツを多用したダンサブルなサウンドが多いかな。
意外と聴く側の耳には心地良くって優しかったりする。
星空の下、そんなサウンドを耳にしながらR275をゆっくりと北上した。

秋らしい好天にも恵まれた僕の秋休み初日だった。
LLサイズとの出合いをイメージしながらこれまでのリサーチと経験を頼りに思いつくままいくつものポイントを彷徨う。
でも、明日からの天気の崩れを予想して、もしかしたら気がつかないうちに焦りがあったかもしれない。
キャスト&スイングが少しずつ雑になっていくのを感じる。
それでも数ヶ所目のポイントではアベレージサイズのアメマスとレインボーが僕のフライを見つけてくれた。


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キャンプ場で迎えた翌朝は雷鳴と大粒の雨の音で目が覚めた。
昨夜は綺麗な星空が広がっていたというのに、予報どおり天候が一変する。
思わずブルっと身震いするような肌寒い朝だった。
予報ではこれからさらに悪化するという予報。
おまけに平地でも雪が積もるという。
とりあえず温かいフレンチローストの深煎りのコーヒーでも淹れて、これからのことを考えないと。


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早朝に響き渡っていた雷鳴が徐々に遠のいていった。
小さな支流は激しく降った雨の影響ですっかりサンドカラーの泥濁り状態。
本流で釣りが出来るタイムリミットまではあと2時間ぐらいだろうか。
慌しく巡った2ヶ所目のポイントで、濁り始めた流れの中からアベレージサイズのアメマスが僕のフライを見つけてくれた。
でもそれからはノーバイト。
濁りはますます酷くなる一方。
リールにラインを巻きこみながら、今年の秋休みはちょっと短かったかなとしみじみと思う。
本当は土曜日までどっぷりと本流で過ごすつもりだったのだけれど・・・笑。

帰りがけに立ち寄ったこの濁りの中でも釣りが出来そうなポイントで、偶然にも旭川のアングラーの方が出合った74のレインボーを見せてもらう。
片側の目は白濁し、顎の周りはこれまで出合ったアングラーとの瘢痕がたくさんあったけれど、体高や大きな尾びれといい本当に素晴らしかった。
丁寧にC&Rするときっとまた素晴らしい出合いがあるに違いないと思った次第。
                                                       67.93→68.30

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# by slowfishing-yun | 2016-10-21 22:20 | Comments(2)