6月の冷たい雨が降り続いていた。
そんな冷たい雨が車のルーフに当たって奏でられる雨音のリズムがとにかく印象的な週末だったと僕は思う。
もしもそれが規則正しいリズムを刻んでくれる音色であればまだ心地良い眠気を誘ってくれるのかもしれないけれど、強弱のある音色にイレギュラーなリズムとくれは、聞き耳を立てているものとしてはその気持ちをいやおうなしに不安にさせられる。
明日は釣りになるのだろうか?
そんな僕の気持とまるでシンクロしたかのような不安定な天候が続いた週末だった。
おまけに遠くから雷鳴がかすかに数回も聞こえてくるものだから…。
朝のうちはまだ雲の隙間から陽も射すぐらいだったから、おそらく雨の存在感も薄かったかもしれない。
リールから素敵なスクリーミングサウンドを奏でてくれそうなグッドサイズのレインボーとの出合いを期待していた僕が最初に訪れたランの始まりでは、期待に反してすぐ下流に今年は大きな倒木が横たわってしまっていて、どうスイングを工夫しても上流からフライを送り込めず、せっかくのポイントが倒木で塞がれてしまっていた。
でもここのバックスペースがほとんどないポイントでは収穫が一つあった。
先週にオレゴンの工房から送られてきた14フィートが13フィートになった7/8番のMKXだけれど、これがエアフロの540grのスカジット・スイッチとの相性がすこぶる良いようで、これは今後の釣行が非常に楽しみになっただろうか。
フィールドにたくさん咲いていたあれだけの黄色いタンポポの花は、1週間も経つとすっかり綿帽子に様変わりしていた。
タンポポの花が咲き終え、このリラ冷えのような寒さがひと段落すると、北の大地にもすがすがしい生命感に溢れた賑やかな初夏の季節がやってくるのだろう。
やがて6月の冷たい雨がアーミーグリーンのガイドジャケットの袖口からジンワリと染み込んできた。
決して激しい雨ではないけれど、それでもこの雨で本流の水位がほんの少し上がったかもしれない。
そして翌朝には水位だけでなく本流の濁度も少し上がってしまったようだ。
ヒゲナガのシャンクが上流からたくさん流れてきて、河畔林の木の枝の下からはヒゲナガが数匹飛び出しても来た。
全般的に表層をスイングさせるウエットフライへの反応が良かったけれど、藪をこいている最中にジャケットのポケットからウエットフライが詰まったフライケースを落としてしまったようだ。
残念な気持ちでいっぱい、唯一残ったのがダンケルト風のスペイフライのみ。また少しずつタイイングしないと…笑。
シーズン前に泥をかき出して少し整備されたと思われる用水路を伝って本流に出た。
目の前に天塩川らしい深いグリーン色をしたトルクフルな流れが広がている。
そこから下流へと相変わらず何事も起こることなくかなりの距離をステップダウンし、そろそろ僕がレインボーとの出合いを諦めかけた時、着水した黒のInteractionがスイングを始めて間もなく、いきなりグゥンとロッドが引き込まれた。
決して大きくはないサイズだけれ、このサイズのレインボーにも関わらず鰭がオレンジ色に染まっていた。
そんなレインボーをそっとリリースする。
するとガイドジャケットの袖口から今度は冷たい6月の本流の水がジワっと染み込んできたのだった。
68.07→68.23→68.17
Today's BGM :