2014年 12月 14日

<Episode #81> 氷のさえずり

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冷たい十勝川の流れにウェーディングしていると、すぐ横の岸際からどこか聞き覚えのある音色が響いてきた。
チリ、チリ、キンキン、チリ、キンと、指先のシビレすらもふと忘れさせてくれるような軽やかでリズミカルな音色である。
何気なく意識をそちらの方へと向けると、その音は岸際から張り出した氷と打ち寄せられた氷とが打ち合って奏でる音色だった。
それは木炭で火をおこした時、ようやく火が落ち着き始めて木炭の周りが白くなり始めた時に響いてくる音色や木琴の音にそっくりだった。
フィールに訪れた冬は、そんな不思議な音色を奏でながら、ゆっくりとそこに根付こうとしてたのかもしれない。
岸際の氷が週を追うごとに成長していく氷点下のフィールドで、ふと僕はそんな事を思った。


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冬型の気圧配置と十勝らしい冬の青空で、フィールドは見事に冷え切っていた。
ロッドのラインが通るガイドは、ひとつの例外もなくその全てが瞬く間に硬く凍りついた。
先端付近のガイドの氷を溶かそうと本流の中にロッドの先端を差し込むと、、今度はロッドの先端のブランクの周りまでもが凍りつく。
こうなると何だかお気に入りのMKSも、ロッドのアクションがモワン、モワンと歯切れの悪いものとなる。
リールを水に浸さないように細心の注意を払いながら、ロッドにまとわりついた氷を何度も取り払うのだけれど、その度に指先のシビレが増していった。


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フィールドの最低気温の推移から、上流から流れてくる氷のことを考えて少し遅めに札幌を発つことにした。
それでも、十勝川の支流のひとつである利別川から流れてくる氷の数が多過ぎて、その下流域ではほとんど釣りにはならなかった。
フィールドにウェーディングしていながらも、流れてくる氷の存在感が気にならなくなったのは、おそらく午後を過ぎてからだろうか。
小振りでプリッとしたアメマスにしか出会えなかったけれど、利別川の合流部よりも上流域では流れもあってなかなか面白かった。


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下流へと膨らむスカジットコンパクト(インター)に引かれてゆっくりとスイングするチャートリュース色のコーンヘッド・チューブ・ゾンカー
フライの名前はさしずめ、"Interaction : インタラクション"。
きっとチューブに固定されたラビットストリップの細かいファイバーとスードゥーヘアが流れの中で妖しく揺らいでいるのだろう。
そんなフライがズドンといきなり強い力でひったくられたのは、午後からさらに下流域へと移動してからのことだった。
バウン、バウンとアメマスのトルクフルな力強さというか幅広のヘッドシェイクと共に、マイザーMKSが大きくバウンドする。
ネットが凍り付いて役に立たないフォールディングネットは車の中だから、ハンドランディングまでにかなりヒヤヒヤしただろうか。
おまけにいつの間にかガイドが凍り付いてラインが通りづらかったから、尚のことリールにラインを巻き込みながら焦ってしまった。
背中がグリーンバックの海の色に染まっていたから、もしかしたら遡上タイプのアメマスだったかもしれない。
尾びれ付近が太くてたくましいアメマスの右顎から、チューブフライから離れたフックをフォーセップで外すと、
一瞬の間をおいて、あっという間に流れの中へと消えて見えなくなった。
このまま気温の低い日が続けば、十勝川で彼らに再会出来るのは、もしかしたら来年の春になるのかもしれない。
そんなことを氷のさえずりをかすかに耳にしながら僕は思うのだった。
                                                          1.72→1.81
P.S. Hardyから"Duchess"というクリック式の新しいリールが出るみたい。

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Today' BGM :




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by slowfishing-yun | 2014-12-14 17:10 | Fishing Reports | Comments(8)
Commented by mooly at 2014-12-14 21:36
Yunさん、こんばんは。
どうにもならない極寒のなか、ガイドどリールを気にしながらする釣り。
この過酷さを含めて十勝ですね。この過酷さを味わっておかないと逆に後悔してしまいます。
あとアメマスに出会えればもっと良かったのですが。
まぁ、三人で楽しく会話しながらの釣行。楽しい一日でした。
私はストップ十勝ですが、ギリギリ来週もできそうですので、
Yunさんの来週のレポート楽しみにしています。(笑)
コーヒーご馳走様でした。
Commented by slowfishing-yun at 2014-12-14 23:00
moriさん、こんばんは。
土曜日は厳しい寒さの中、お疲れ様でした。リールはもちろんですが、本当にガイドがよく凍ってくれました(笑)。
豆源の神戸ブレンド、我が家では定番なんですよ。細かく挽いた湘南ブレンドは、エスプレッソにお勧めです。
今度の週末は、さすがに迷いますね。
フィールドのコンディションが少しだけ良い方向に向かってくれると良いのですが・・・笑。
moriさんに次回お会い出来るのは、新年会ですね。
Commented by andieloop at 2014-12-15 20:57
Yunさん、こんばんは!
ラス前(?)の十勝川釣行お疲れ様でした。
フィールド条件の極めて厳しい中での価値ある一尾、おめでとうゴザイマス。
私は、かなり葛藤しましたが、安易に妥協して近場の川でセコく小型のアメマスと遊んでいましたが、十勝のアメマスはやっぱり厳つくて格好良いですね。
川に立ち込み、ロッドを振る限り、可能性はあるということが分かりました。こういうレポートを見ちゃうと、『私にも釣れるかも?いや、釣れるに違いない!』と思っちゃうところが、怖いです(笑)。更には、ちょっとだけ試してみたい事もあるので、十勝川には、出来れば、もう一度行きたいところです。
Commented by slowfishing-yun at 2014-12-16 13:01
andieloopさん、こんにちは。
なかなか寒さの厳しい週末でしたね。私は足の指先がしもやけになりかけています(笑)。
今回は流れてくる氷に諦めかけていましたが、最後にチャンスが巡ってきたようです。
インタラクションと命名したコーンヘッド仕様のチューブフライ、今回も活躍してくれました。
あれから少しアレンジを加えているんですよ・・・笑。
そろそろフィールドも結氷しそうですね。
以前川がいよいよ氷で閉じようとしている状況に遭遇したことがありますが、なかなか印象深かったです。
そうですね。状況が許せばもう一度最後に足を運んでみたいところです。
Commented by bolocyan at 2014-12-16 22:46
yunさんこんばんは
先週は僕も今年初めての週末の釣行で十勝川を訪れていましたが、もしかしするとと
橋の上から辺りを見回してみましたが、誰一人アングラーを確認することはありませんでした。
僕は橋より下流にいました。
アメマスに会う期待よりもお会いできることを楽しみにしていましたが、なかなかお会いできないものですね (笑)
来年こそはお会いできることを楽しみにしています。
それではまた・・・
Commented by slowfishing-yun at 2014-12-16 23:00
bolocyanさん、こんばんは。
十勝川へと足を運ばれていましたか。残念ながらお会い出来ませんでしたね。
午前中は利別川合流よりも上流に、午後からは茂岩橋よりもさらに下流へと足を運んでしました。
それにしても12月のフィールドは、なかなか厳しいものですね。
氷が次から次へと流れてくると、テンションが下がってしまいます。
こちらこそ、来シーズンはお会いできるのを楽しみにしております。
Commented by maximizer828 at 2014-12-17 19:59
yunさん、こんばんは。
週末は極寒の十勝川お疲れ様でした。
今年、何度目だったか忘れてしまうくらい十勝に通いましたけど、今回のリールが回らなくなる程の厳しい釣りも楽しかったです。僕は今回もアタリのみでしたが色々と良い経験になりました。ただ、少し心残りですが…(笑)
美味しい神戸ブランドとシュトーレンご馳走さまでした。
それにHARADY(笑)のフライケースもありがとうございます。
あのケースを使うと釣れそうな気がするので大事に使わせて頂きます。

Commented by slowfishing-yun at 2014-12-17 23:24
maximizer828さん、こんばんは。
土曜日はお疲れ様でした。それにしても今年の晩秋から初冬にかけては何度も十勝川に通いましたね(笑)。
もしかしたら今年は週末アングラーにとって、好天に恵まれた日が多かったかもしれません。
例年だと雨で増水して、釣りにならないこともあるんですよ。
きっとフィールドでの経験値が増えたので、おそらくどんなフィールドでもキャスト出来るようになられたと思います。
来シーズンが楽しみですね。
あのケースでよければ、ボロボロになるまで使って下さい。
HARADYの文字が擦れて薄くなるにつれて、大きなトラウトとの距離も近くなると思います(笑)。
P.S.週末の十勝はかなり増水したようですから、もしかしたら厳しいかもしれませんね。


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